週刊雑話第154回(平成14年3月2日)

■卒業式のシーズンがやってきた。我が校でも先月27日に行われ、生徒の大半が高校が最終学歴となる学校らしく、例外もちらほら見受けられたが全体的に「けじめ」のある卒業式であった。思えば5年前、自分も我が校で初めて卒業生を出した。普通高校ではめったに経験できない「3年間クラス替えなし担任持ち上がり」で、一時期「こいつらと3年間もともにすんのか」と思うとうんざりすることもあったが、3年半ばぐらいからさすがに情が移るのか不思議に髭をはやしたうっとおしそうな奴でさえ可愛く思えてきた。
■日記でも書いたが、我が校の卒業式は女生徒が泣くでもなく、全員で「19」の「あの紙ヒコーキくもり空わって」みたいな定番ミュージックを合唱するわけでもない、実に淡々とした卒業式である。それはそれでいいのだが、あまりに淡々としすぎてちょっと生徒が可愛そうかなと思ったりした。そんなこともあって我が学年団では、ちょっとは雰囲気を盛り上げてやろうと、体育館に各クラスで作った絵を張り合わせて巨大壁画を作成したり、3年間の写真をスライドにして卒業式開始前に流すことになった。自分はBGM担当となり、「BGMで泣かす」ことを目標に曲の選定作業に入った。選定の基準として、(1)同じ曲ばかり流しっぱなしにしない(2)今風の曲も取り入れる(3)歌詞入りは生徒が一緒に歌うかもしれないので少なくする、などを決めた。そんなとき、同じ学年団のK先生が「これええんとちゃいますか」と見せてくれたのがあって、それは今風のヒット曲をピアノや弦楽四重奏にアレンジしたもので一発で気に入ってしまった。「よっしゃ、この路線で行こう」と即決。レコード屋やレンタルショップを巡ってCDを買いそろえ、1曲ずつカセットテープに録音、「ここでフェードイン」「これが終わったらすぐにこれ」とか書いた詳細なプログラムを作って放送部顧問のE先生に「お願いします」と渡した。当日、驚くほどスムーズにプログラムは進行、生徒で泣いているものはおらんかったが、スライドショーが終わったときに保護者席から拍手がわき起こったのは嬉しかった。薄暗い舞台裏で寒さに耐えながらテープの入れ替えやボリューム調整をやってくれた社会科のE先生と、大いなるヒントを与えてくれたK先生には感謝の気持ちでいっぱいだ。
■以下卒業式当日に流した曲をプログラムに沿って紹介する。レンタルショップで借りたものは現在手元にジャケットがないので、「NO PRINTING」とした。

(1)ファンファーレ
■25秒のトランペットによるファンファーレ。レンタルレコード屋で借りた「式典用BGM」に入っていたものでジャケット写真はない。式典のスタートはやっぱりファンファーレに限る。体育祭ではJRAの競馬シリーズを使用しているが、卒業式にはまったく不向き。これぐらいのあっさりしたのが一番いい。
(2)Love Letter
■スライドショーBGM。槇原敬之(春日丘高校出身)原曲。
■「線路沿いのフェンスに夕焼けがとまってる/就職の二文字だけで君が大人になってく/向かいのホーム特急が通り過ぎるたび/途切れ途切れの頑張れが砂利に吸い込まれていく/ホームに見送りにきた友達に混ざって/きっと僕のことは見えない/大好きだ大好きだってとうとう言えないまま/君が遠くの町に行ってしまう/何回も何回も書き直した手紙は/まだ僕のポケットの中」。ピアノの和音でかっこよく始まるこの曲は、今聞いても何故か胸がきゅっとする。ファンファーレが終わってその直後にこの曲が体育館に鳴り響き、それと同時にスライドショーが始まったとき、なんともいえん充実感でジーンときた。途中で「自転車を押しながら帰る夕暮れ/この駅を通るたび/編み目の陰が流れる横顔を/僕はこっそり見つめていた」とバックコーラス付きのクライマックスがあり、自分はこの部分が一番気に入っている。非常勤講師としてきてもらっていた若い女の先生から数枚借りたCDの中にあった名曲。このとき自分がBGM担当でなかったら、おそらく知らないままであっただろう。
■数年前に槇原敬之が諸般の事情で逮捕されたとき、この曲に出てくる「君」が自分の思っている「君」と性が違うかもしれんなあと思ったりしたが、そんな下世話な憶測はしばらくしてから自分の脳裏から消え去り、自分の中では希有の名曲として今もなお燦然と光り輝いているのである。
(3)空も飛べるはず
■スライドショーBGM。スピッツ原曲。ちょうどテレビドラマ「白線流し」がオンエアされていた時期で、その主題歌としてヒットしていた「空も飛べるはず」を卒業式で流すのは当然といえる。「TOKIO」の長瀬の演技が意外にも新鮮でよかった。この曲だけは特別扱いで、アレンジ版が後で出てくる。予想よりスライドショーの時間が長かったので、「Love Letter」「空も飛べるはず」が終わってもなお少し続いた。
(4)Without You
株式会社シーティーエー
HISTORY OF THE ROCK VOL5(1971〜1972)
■スライドショーBGM。NEILSON原曲。ご存じオールディーズの定番。「これをピアノで弾き語りができたらかっこええのに」と楽譜を買って練習したことがあった。最初の方は意外に簡単であったが、結局マスターすることなく終わってしまった。「世界の歌姫」こと「マライア・キャリー」もカバーしているが、やはり原曲の「NEILSON」にはかなわない。ただし、卒業式では今ひとつそぐわない印象を持った。生徒にも歌詞が分かりやすい日本の歌の方がいい。
(5)卒業写真
ビクターエンタテインメント株式会社 VICP−5303
クラシックで聴くニューミュージック
■3CA卒業証書授与BGM。弦楽四重奏。これをBGMに担任が生徒の名前をひとりひとり読んで、それに応えて生徒が返事をして起立する。「いっちょうおちょくったろか」と計画していたワルもふざけたことはやりにくかっただろう。卒業式にはやっぱりこの曲ははずせない。イントロが今は亡き「仰げば尊し」ではじまるので、一瞬みんながびっくりするのが面白い。前出のK先生が持ってきてくれたCDだ。
(6)Anniversary
■3CB。ピアノソロ。ユーミンの曲が連続する。「Anniversary」の意味は「(例年の)記念日、 記念祭」。ユーミンには申し訳ないが、原曲よりもアレンジ版の方がはるかにいい。ピアノソロのしっとりとした落ち着きが式の空気にぴったり。アレンジするとこんなにも雰囲気が変わるのかと驚いてしまう。
(7)Yesterday Once More
■3SA(我がクラス)。弦楽四重奏。本当は某クラスで流した曲を我がクラスで使用したかったのであるが、あきらめてこれを選んだ。別に担任が「これを流して」と要求したのでもないのに、自分がBGMにノミネートした曲の中で低い評価の曲を遠慮して選んでしまった。評価が低い理由は、弦楽四重奏にしては荘重さに欠けており、イントロ部分が長いので、自分が「材料技術科3年A組」と言い出すタイミングが取りにくいから。ちょうど卒業生が1年生の時に「カーペンターズ」のリバイバルブームがあり、1曲ぐらいは流して当然であったと思う。中学生の頃、レコードが擦り切れるぐらいきいた「カーペンターズ」の一番のヒット曲は「Yesterday Once More」だが、一番の名曲は「ソリティア」というのが自分の意見だ。
(8)シーソーゲーム
BANDAI MUSIC ENTERTAINMENT INC/APCE−5473
ACOUSTIC SOUND VERSION
KAZUTOSHI SAKURAI
■3SB。弦楽器&ピアノ&フルート。ミスチルが歌う原曲はかなりのアップテンポで歌詞は「愛想なしの君が笑った/そんな単純な事で/遂に肝心な物が何かって気付く/打ち明け話にあった純情を捧げたっていう奴に/大人げなく嫉妬したりなんかして」というもの。卒業証書授与にはあまり似合わないことが、卒業式が終了後初めて原曲を聞いて分かった。
■初めて登場する「ACOUSTIC SOUND VERSION」。難波でありながらいつも人がまばらな「O’CAT」の「丸善」で購入。「新星堂」や「タワーレコード」にそれらしいのがなく、これが最後と思い足をのばした「丸善」で見つけたもの。ジャケットを見ただけでは、自分が目指している「弦楽四重奏」や「ピアノソロ」かが分からず、「もしかしてブラスバンドみたいな演奏やったらガックリ都市やなあ」と、しつこく店員に食い下がって販売元まで電話できいてもらった。
(9)少年時代
■3MA。弦楽四重奏。井上陽水作詞作曲。「卒業写真」とともにどうしても卒業式BGMからはずせない定番の名曲。「少年時代」という曲名の先入観があるからか、これを聞くと必ず小学校時代に遊んだ神戸・垂水界隈の風景を思い出す。瑞穂公園、三角公園、大町公園、福田川、高丸小学校、○○池、三菱グラウンドのチョコレート階段、こどもや、友達の自宅などなど。福田川をひたすら北上して、周囲の見たこともない田園風景に不安を覚えて急いで引き返したり、海側を走る山陽電鉄の踏切で電車が通過する直前に踏切を横切ったりして怒られたりした。
(10)未来予想図U
BANDAI MUSIC ENTERTAINMENT INC/APCE−5477
ACOUSTIC SOUND VERSION
MIWA YOSHIDA・MASATO NAKAMURA
■3MB。ピアノソロ。「卒業してからもう3度目の春/あいかわらず側にあるおなじ笑顔」で始まるドリカムの大ヒット曲。前出の「Anniversary」とともに「ピアノソロはほんまにカッコええ」と思わせる曲だ。「未来予想図U」というからには「T」もあるのだろうか。あるとしたら一度聞いてみたい。
(11)乾杯
■3EA。ピアノソロ。
(12)空も飛べるはず
BANDAI MUSIC ENTERTAINMENT INC/APCE−5443
ACOUSTIC SOUND VERSION
MASAMUNE KUSANO
■3EB。弦楽四重奏。
(13)君と暮らせたら
同上
■送辞。弦楽器&フルート&ピアノ。アップテンポで元気な原曲をメローなバラード調にアレンジ。
(14)For All We Know
VAP/VPCD−84303
HEART WARMING GUITAR MIKIO WATANABE
■答辞。ギターソロ。邦題は「ふたりの誓い」。
(15)名もなき詩
BANDAI MUSIC ENTERTAINMENT INC/APCE−5473
ACOUSTIC SOUND VERSION
KAZUTOSHI SAKURAI
■保護者謝辞(?)。ピアノソロ。
(16)DAN DAN 心魅かれてく
■退場曲。ZARD原曲。
(17)大地の子 エンドタイトル
NHK・放送70周年記念番組日中共同制作ドラマ
「大地の子」オリジナル・サウンドトラック/WPC6−8173
■卒業生退場後、
(18)大地の子 一心
同上

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